そして製品戦略を社会科学の研究者が論ずる場合には歴史的視点を軽視すべきではないと思われる。といつのも全くの誤りが常識とされることを日常生活で我々は体験しているからである。コントで演じられる金色夜叉で我々が目にする貫ーは黒のマントで下駄履き姿であろう。しかし原作の高等中学の制服の上に焦茶の外套を着てから服飾史家によれば貫ーは詰め襟の学生服にオーヴ、アコート姿なのだという(明治中期の1高等中学校生の服装としてはコントに登場するスタイルはあり得ないという)。大正時代の旧制高校生にマントと下駄が流行し次世界大戦直後まで続いたその姿が今日に引き継がれたようである。登場人物の衣服を生地や色や仕立てまで細かく描写する作品(例えばバルザック)と対比すると1般の小説の時代考証は困難で、作品が書かれたときには説明なしで了解された内容ほど時代を隔てると再現し難いことは確かであろっ。もちろんこれはタイムトラベルできない消費者に容認されそつな問題であるがしかし日本人の海外渡航者の急増を考えると現地の本物とあまりに異なる製品は消費者志向を歪曲していないかという点で検討を要するのかもしれない。極論すれば財であれサービスであれ(したがってサービス生産に必要なハイテク厨房のょっな製品にもかかわる)歴史的文化的背景を考慮せずに現在の市場ソニーズのみを拠り所とした中途半端な製品開発でプレミアム価格を容認する消費者のブランドロイヤルティを獲得することは難しいのではないか。

